アクリル加工についての相談を受け付けています。曲げ加工やNC切削加工、面取り、磨き、エッチング、切り文字等の加工のことから納期やコストのことまでどんな些細なことでも結構ですので、ご気軽にご相談下さい。
私、松原ができる限り分かり易く誠意を持って回答させて頂きます。 担当:松原
初めてお見積りをご依頼される方のための加工に関する豆知識
初めてお見積りをご依頼されるときに、アクリルの種類や規格を少しご理解いただけたら、ひょっとしたらお見積りが安くなるかもしれません。
弊社ではなるだけ、簡単に安く、きれいに仕上がる方法をご提案することを心がけておりますが、設計の段階で防げることもあります。
そんなあなたに、知っておいていただきたい加工屋からのアドバイスをみなさまとのやりとりから書き出してみました。
化学的な物証ではなく、現場での加工しやすさとかをベースにしているので感覚的なものも多いので転写、複製はご注意ください。よろしくお願いします。
【第1話】押し出し板とキャスト板の違いについて
【第2話】刃引き(糸面取り)の大切なお話し
【第3話】磨き仕上げ(バフ)、ガス仕上げ、鏡面仕上げの違いの話
【第4話】抜いたり、削ったりのお話
【第5話】曲げ加工と耐熱温度のお話
【第1話】押し出し板とキャスト板の違いについて
知っておいてください!アクリルには見た目は同じでも、押出板とキャスト板という二つの種類があるのです。(お値段が倍ほど違いますよ!)
お見積りのご依頼をいただいたときに、最初に見せて頂くのは押し出し板でいけるのか、キャスト板を使用しないといけないのかという分別をいたします。
どうしてかといいますと、キャスト板の方が押し出し板より倍ほど高いのでみなさまにお出しする見積がご予算の範囲内でいけるようにしたいからです。
とどのつまり、高い材料を使って決まらない見積りを出すよりもよろこんでもらえるお見積りを出した方が、私たちも仕事をいただけるというメリットがあるからです。
ですので、アクリルなどの樹脂は木材などに比べて高いものですから できるだけ安い材料で(といっても高いかもしれないですが)製作できるサイズや厚みをご提案するわけです。
アクリルにおける押し出し板とキャスト板の違いや用途をここからご説明します。
おおざっぱでよければここから数行程度でご理解いただけると思います。
アクリルの押し出し板とキャスト板の違いは
押し出し板は
1 安い(キャスト板に比べて)
2 色板の種類はわずか
3 接着しやすい
4 厚み20ミリまで
キャスト板は
1 色板が豊富
2 厚みはどこまでも分厚くできますが、規格は50ミリ(透明のみ)まで
3 黒、白、乳白色は厚み20ミリまで
4 そのほかの色板は厚み15ミリまで
5 基本的にキャスト板は色や厚みなどオーダーメイドが可能です。
6 板の厚みが一定ではない。
<もう少し詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。>
●押し出し板
アクリルの押出板はところてんのように機械から押し出された板がローラーに乗って出てきます。
それを、規格サイズにカットして3×6(3尺×6尺)サイズや定尺1100×1300サイズなどに切り分けられます。ローラーの幅以上のサイズが出来ないので、最大でも短い辺の寸法は1350ミリまでとなっております。厚みは最大で20ミリの厚みまでとなります。白色や黒色などの色物は分厚いものはありません。
特徴としては分子量が粗いので、溶剤が入りやすく接着に向いています。
一般的には板の価格がキャスト板の半額くらいなので多くの物件に使用されています。
●キャスト板
一方、アクリルのキャスト板はガラスで枠を作り、そこに原料を流し込んで固める製法です。
アクリルの押し出し板の比べてガラスのサイズを変えることで様々なサイズを作れるので、押し出し板よりも大きな板の規格があります。
これも透明(クリア)とオパール色に限定されてきますが、2000×3000サイズの規格があります。
厚みは50ミリまでが一般的で、黒色や白色などの色板は20ミリ厚までそのほかの色板は15ミリ厚までが最大です。
もっとも際立った特徴は様々な色の板があるということです。一般的には分子量がきめ細かく耐久性が押し出し板より高く板の伸び縮みが一定なので熱をかけた成形加工や屋外での使用に適しています。また大きなサイズの水槽などに使用される材料はキャスト板です。
【第2話】刃引き(糸面取り)の大切なお話し
刃引き(糸面取り)を知らないと大きなトラブルになるかもしれません。
3分程度で済みますので
初めてアクリル加工をご依頼される方は少しお読みください。
あなたが、アクリルの業者など全く知らないのに、会社のプロジェクトで突然上司にアクリルの什器を考えてくれと言われたとしましょう。
形状はなんとか考えついて、アクリルの加工業者も見つかって、仕入価格もなんとか予算内に収まって製品が出来上がりました。
出来栄えもよく、上司も満足な様子。
国の店舗に発送し、各店舗での陳列が始まりました。
ところが、これで完了のはずが各店舗からお客様がアクリルの什器でけがをされて、対応をどうしたらよいでしょうかという電話が数件。
その日を境に各店舗から電話が。
挙句の果てにはお客様から直接本社へ苦情が入る始末。
対応に困った上司からの指示は、すべて回収の指示でした。
どうなってるのでしょう、完璧だったはずなのにこんなことになるなんて。
これは冗談ではありません。
極端な例かもしれませんが、
実際に何度も起こっている事実です。
通常日本ではお客様がサンプルを頻繁にさわるような化粧品などの什器の場合、
刃引き(糸面取り)は必須です。
磨き忘れよりも、刃引きをしていないことの方が事態は重大です。
手が引っかかったりしてけがをするような什器はだめなんです。
いかがでしたか?
ここまでお読みいただければ、あとは加工業者との打ち合わせの中でご注意いただければ大丈夫です。
さらに詳しい内容をお知りになりたい方はもう少しお時間を頂戴します。
次へお進みください。
刃引きを回避する裏ワザもありますので、裏ワザだけ知りたい方は最後尾にご紹介しておきますのでご覧になってください。
それでは、どういう局面で刃引きが必要なのかコストのやりくりについてお話しましょう。
刃引きの重要性については前述でふれたとおりです。
刃引きは糸面取り(金属部品や成形品でいうところのバリ取り)です。
実際にはバリが出ているわけではないのですが、仕上げた部分がシャープなので、この面をころすために0.2ミリ程度落としてあげるのが刃引き(糸面取り)です。
板1枚や什器1台だけならともかく、複雑な形状や、パーツが多い什器などの刃引きは
結構な手間がかかるのでコスト面に意外と影響を及ぼします。
刃引きが必要な製品はどんなものか、断定できないものもありますが参考として下さい。
必要なもの
・化粧品のサンプルを乗せるもの
・家電や携帯(スマホ)用の陳列什器
・取り外しを頻繁に行う機械カバー
・ブックスタンドなどデスクまわりの製品
・五面体のケース、コレクションケース(人形ケース)
・店頭販売するための容器、ケース
・第3者が皆様のお客さまである場合、手のふれるものは対象となります。
必要のないもの
・機械部品
・展示会などに出店する作品(エッジをシャープなまま演出したい)
・オブジェ
・高所に設置するもの
・金属や木などで隠れる部品
・製品の板の厚みが薄いもの(1ミリ以下のもの)
・トムソン加工、レーザー加工した製品
コスト面ではどうでしょうか
例えば皆さんがご注文される製品をご自身で刃引きすると考えた場合、
面倒くさいか、面倒くさくないかがカギです。
面倒くさくなければ、さほどコストに影響はないです。
影響が出るケースは
・すごく大きい
・形状が複雑
・数量がとても多い
といったところです。
最後に裏ワザをご紹介いたします。
刃引きをしないで済む方法は
条件は透明の板に限定されますが、
磨き仕上げをガス仕上げ(焼いて光らせること)とすることです。
簡単すぎてすいません。
通常磨き仕上げの場合、バフという布で磨き、刃引きはその後にするのが通常の工程です。
この工程をひとつにまとめるのがガス仕上げです。
バフ仕上げはアクリルの透明感をころさず仕上げていきますが、ガス仕上げはそもそも焼いているので若干黄ばむのが難点です。
ただし、見た目にはわからないのでこの仕上げ方法で工賃を抑えてお客様も我々加工屋も
ありがたい加工方法です。
焼いた部分ではけがの心配もまずありません。
ご依頼の際ぜひはお試しになってください。
【第4話】 抜いたり、削ったりのお話
アクリルや塩ビ、ポリカーボネード、ABSなどの樹脂の板は抜いたり、
削ったり色々な形にすることが出来ます。
手法は主に三つ
・NC(ルーター)加工
・レーザー加工
・トムソンやプレスなどの抜き加工
3つとも特徴があるのでまずはざっと説明いたします。